国際ジャーナリスト 大野和基
著書・訳書

武器としての英語論
第4回 「何とか通じればいい」からの脱却

英語をできるだけネイティブに近づけるには“Don't settle for less.”と思うことである。これは“Don't settle for less than what you really want.”という意味で、日本語にすると「妥協するな」となるだろうか。アメリカ人の30代の未
婚女性同士が、“Don't settle.”と言い合っているのを聞いたことがあるが、これは「妥協して結婚するな」という意味である。

具体的に言うと、どれだけ英語が世界の言語、つまりnon-nativeが使う共通語としての言語になっても、基軸になるのはネイティブの英語である。基軸が狂ってしまうと、日本式英語でもいい、ということになってしまい、上達はそこで止まってしまう。

妥協しない方法の一つは、自分が知っている表現よりも、いい表現に出くわしたら、入れ替えていく(update)習慣である。「何とか通じればいい」と思わないことだ。例えば、私の場合、ニューヨーク・タイムズの記者やコラムニストとE-mailでやりとりすることが多いが、「もうすぐ取材でニューヨークに行く」ことを伝えると、“Just give me a heads-up.”というメールが来る。“heads-up”というのは「注意喚起」という意味だが、「いつ着くのかわかったら、教えてくれ」という軽い意味である。こういう便利な表現に出くわすと、次に逆の立場になったときに、今度は自分が使うようにするのである。

連絡する、と言うときに“contact”ではなく“touch base”、「会いましょう」と言うときも“Let's cross paths.”など、垢抜けた表現がある。そういう表現を知ったときに、次に自分で使うと簡単に身につく。

ここで重要なことは、英語に接する機会がどれだけあるかということである。私の場合はほぼ毎週ある週刊誌用の取材、資料、海外とのやりとりはほとんど英語だから、英語を使わない日はない。読む本もほとんどが英語であるから、常に英語に接していることになる。

ネイティブの同業者、一流の作家とやりとりしていると勉強になることが多い。この前も、“The Commoner”という皇室小説を書いて、全米の耳目を集めたジョン・シュワルツという作家にメールしても返事が来ないので、心配していたら、“Sorry for the silence on my end-I was traveling.”というメールが来た。こういう短い表現でもうまいと思う。

最近、日本式英語でも何とか通じればいいと主張する人が増えているような気がするが、日本語を知らないあるいは日本人の発想法を知らないネイティブは誤解するだけである。

「何とか通じればいい」という考え方を捨てることはとても重要だと思う。最初は難しいかもしれないが、ネイティブが使わない表現をあまり使わないことである。例えば、相手に通っている学校を聞くときは、“Where do you go to school?”と言い、日本語から直訳したような“What school do you attend?”とは言わない。これは理屈ではなく、言わないものは言わないので、使わないことである。もし最初からそういう自然な表現を知らなければ、知った段階ですぐに入れ替えることだ。ネイティブに近づくにはそれしかない。「この店は何時まで開いていますか」と聞くときは“How late are you open?”と聞く。“I can't figure it out.”で使われる“figure out”もよくネイティブが使う言い回しだ。“available”も使う範囲が、日本語の訳からは想像できないほど大きい。「明日、時間が取れますか」と聞きたいときは、“Can you make yourself available sometime tomorrow?” のような日常ごく普通にネイティブが使う表現を使うと、コミュニケーションがスムーズに行く。

自然な表現を増やすには、できるだけ日常でネイティブの英語に接する機会を増やすしかない。英語の本、雑誌を読むことを習慣にするだけで、かなり変わってくるだろう。

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