国際ジャーナリスト 大野和基
著書・訳書

武器としての英語論
第2回 英語を英語のまま理解するには?

初回で英語の重要性についてかなり強調したが、思うに、英語ができなかったために命を落とした日本人がきっといるに違いない。例えば、1992年に起きた服部君射殺事件だ。ルイジアナ州バトンルージュの住宅街で起きたこの事件について、日本のメディアは連日大々的に報道していたが、最終的に刑事訴訟の陪審員はnot guilty(有罪でない)の評決をロドニー・ピアーズに言い渡した。報道の中には「服部君は、ピアーズに"Freeze!"と怒鳴られたときに、それを"Please"と聞き間違えたかもしれない」という内容のものがあったが、もしこれが本当であるとすると、英語がわからなかったために死んだことになる。死人に口なしだから裏の取りようがないが、このようなケースはほかにもあると思う。そう考えると、英語をマスターするかしないかは、死活問題になる。

日本人が英語をマスターできない原因の一つに、英語を英語のまま理解できないことがあると思う。英語学習で重要なことは、訳さずに、深く明確に理解できるようにすることである。通訳や翻訳という仕事をしていない限り、いちいち日本語にする必要はない。母語で考えないと内容が把握できないというのは、英語が身についていない証拠である。一旦、英語のまま理解できるようになると、翻訳を読むのがバカらしくなるだろう。すらすら話すことができないのも、英語で考えていないからだ。

私がアメリカの大学に留学して、化学、物理学、数学、基礎医学などを勉強したときは、一切日本語を使っていない。英語のまま理解していた。英語で考え、英語で書き、英語で話せるようになるにはこれが最短距離である。通訳の仕事を少しやるようになって初めて日本語を勉強したが、それ以外では日本語を介するとかえって、英語の学習の妨げになる。翻訳の仕事をするなら話は別だが、そうでない限り英語のまま理解でき、問題が解けるようになることは頗る重要なことである。英語のまま理解できるようになると、どれほどベテラン翻訳家の卓越した訳を読んでも、不満に感じるときがある。それはもう翻訳の限界であるのだが、言わば翻訳の功罪の「罪」の部分に当たるだろう。

さて、英語のまま深く、正確に理解できるようになるには、多くの英語に日ごろ接することが重要であるが、そのときにテーマを決めて深く掘り下げることをお勧めする。

私の場合は、その機会が仕事上与えられる。ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ教授にインタビューするというアサインメントを受けると、まずやることは彼の著書を英語で読むことである。英語でインタビューする限り、英語で読むに限る。翻訳を読み英語でインタビューすると、必ずずれが生じ「そんなことは書いていない」と言われることがあるからだ。原書の入手が間に合わないときには仕方なく翻訳を読むしかないが、翻訳から元の英語に戻すとどうしてもズレが生じる。

例えばスティグリッツの著書を英語で読むと、内容を理解するための前提として、少なくともそのテーマに関する英語の単語、表現がごく自然に身につく。覚えようとしなくてもいい。内容把握を伴う言語学習ほど効率がいい方法はないだろう。そのテーマに関して、英語でネイティブとまったく加減なしに議論ができるまでに理解することが、私には要求される。

インタビューする場合は、通訳と違って自分で質問を考え出さなければならない。まず相手をリラックスさせ、心を開かせるような質問から始め、鋭い質問に入っていく。順序を間違えると気分を害されることになりかねないので、知的な綱引きに似ていると思う。

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