国際ジャーナリスト 大野和基
著書・訳書

武器としての英語論
第1回 英語をマスターする動機について

英語で取材し始めてから早24年以上経つが、最近、昔よりも英語が重要になっているとつくづく思う。一つには、グローバリゼーションが言語にも影響して、英語がデフォルト言語として確立したことが挙げられるだろう。単に日常会話レベルでもいいから英語をマスターしたいというような低レベルの話ではもう済まなくなっていることは確かである。

最近、「まず母語である日本語をしっかりマスターしてから、英語をやるべきだ」という意見が日本の識者と言われる人からよく聞かれるが、こういう人は、「外国語を知らない人は、自国語についても無知である」というゲーテの名言を忘れているのであろうか。ゲーテのこの箴言はまことに正鵠を得ていると思うが、母語をしっかりマスターするには外国語を真剣に勉強すべきであるというのが私の持論である。

言語学、文法学を専門とするごく少数の学者は別として、一般人にとっての英語は手段でしかない。私の場合、日本語のユニークさ、表現の豊かさに気づいたのは、英語を深く勉強してからだ。無意識に使っていた母語がアメリカ人にとってどれだけ複雑であるかは、アメリカ人から日本語について具体的な質問をされて初めて気づいた。日本人やアメリカ人の思考法を客観的に見ることができるようになったのは、ほかならぬ英語学習や翻訳、通訳を通してであった。

さらに、日本人にとって、英語を死ぬほど真剣に学習する理由の一つは、日本を一歩出ると日本語は通じないということである。この厳然たる事実だけで、英語をマスターしなければならない、という動機として充分だと思うが、みなさんはどうお考えだろうか。私は世界中に取材へ行くが、日本語放送が機内で流れるのは日本発か日本行きの便だけである。年に90回も飛行機に乗っていると、たまにかなり重要な機内放送が流れることがある。世界中どこに行っても必ず英語でアナウンスされるが、たまにしか海外に行かないから関係ないと思う人がいるかもしれない。しかし、もし現地で事件に巻き込まれたら、そのときに英語をやっておけばよかったと思っても時すでに遅しである。通訳をつければ問題がないという人もいるだろう。オーストラリアの刑務所には、通訳の(意図的?)誤訳で刑務所に入れられたままの日本人がいる。もしあなたがその身になったらどうするのだろう。空港で知らぬ人から、小物を持っていってほしいとやさしく声をかけられ、人がいい日本人は、それがドラッグであるとは知らずに断りきれず、あずかってしまう。一旦検知されると、いかなる言い訳も通じない。

海外旅行先で事故や事件に巻き込まれた場合、日本語ができる現地人を見つけることは不可能に近いが、英語が現地語でなくても、英語ができる現地人は簡単に見つかる。これだけでも命が救われることがあるのだ。

ペルーで取材が終わり、アマゾンの森林に3日間ほど小旅行に行ったときに同行したガイドは7ヶ国語ができたが、そこ日本語は入っていなかった。一緒に参加したほかの旅行者との共通語は当然英語であり、ガイドが説明することを正確に聞き取らないと命に関わることが何回かあった。海外での危機管理や危機処理には、英語は絶対に必要である。まさか、英語ができないために、殺されるとは思いたくないだろうが、そう思っていいほどだ。

さて、ここまで読んで、読者の方はどれほど真剣に英語をやらなければならないと思っただろうか。ぜひ知りたいものである。これからこのコラムで英語について、具体的な話を交えながら、書いていきたいと思っている。乞うご期待。

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