国際ジャーナリスト 大野和基
著書・訳書

月刊文学界 2006年8月号
カズオ・イシグロ/Kazuo Ishiguro
『わたしを離さないで』 そして村上春樹のこと


一種のミステリーとも読める最新作の意図とは?日本で育った幼年時代から作家としての作法、最も気になる現代作家・村上春樹まで旺盛に語る。

- 最初に、最近邦訳が出た『わたしを離さないで』について、お聞きしたいと思います。ご存知かもしれませんが、この前来日されたときにあなたにインタビューした、翻訳家の柴田元幸氏が、この作品についてこう書いておられます。「その達成度において、個人的には、現時点でのイシグロの最高傑作だと思う」。これについてどう思われますか。

イシグロ 翻訳本を見ていないので、そのことは知りませんでしたが、お褒めの言葉をいただいて、とても気分がいいですね。ありがたく思います。私は51歳になりますが、とりわけこの年になると、最新作が、少なくとも以前の作品よりも劣っていないという評価を受けていると思うことは、いつも嬉しいものです。小説家が、作品を発表し続けるということは、時には難しいことがありますから、これを励みにしたいと思います。
カズオ・イシグロ

- これは一切予備知識なしに読んだ方がいい小説だと思いますが、その上であえてお聞きします。『わたしを離さないで』にはクローン技術や臓器移植が主要なモチーフとして埋め込まれています。この作品を読んで、テキサス州にある、ヒヒの養殖場を思い出しました。そこでは臓器移植のためだけに、無薗状態でヒヒが養殖されていますが、昔、ピッツバーグ大学医学部で、ヒヒの肝臓が人間に移植される手術を観察して、長い記事を書いたことがあります。13時間にもわたってずっと観察しましたが、もしその養殖場のヒヒが、人間に置き換えられたら、主人公たちが育つ施設ヘールシャムと同じような場所になりますね。

イシグロ その養殖場のことは知りませんが、へールシャムと同じような場所ではないかもしれません。へールシャムはかなり特殊な場所で、昔ながらの自然農法に相当するようなやり方で営まれていると思います。クローンたちはとても大事に扱われます。ですから、同じようなセンターと比べても、まったく違います。そこで子供たちは、我々が言うところの最高の教育を受けて育てられます。しかも、特定の理由があっての教育です。彼らは自分の運命を知らない上に、自分がクローンであることが何を意味するのかもよくわかっていません。牧歌的な子供時代に近いと言ってもいい。

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わたしを離さないで
わたしを離さないで
(ハヤカワepi文庫)

カズオ・イシグロ (著)
土屋政雄 (翻訳)
早川書房
2008/8/22
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