国際ジャーナリスト 大野和基
著書・訳書

SAPIO 2006年3月22日号
在シドニー総領事館元工作員が実名告発
日本の最先端技術を盗む中国国家安全部
「産業スパイ・工作員の全手口


日本の軍事・産業技術のスパイ活動に最も積極的な国が中国であることは間違いないだろう。強大化する中国の最大の“弱点”は技術力の低さにあるが、それを補うためには、技術大国であり、しかも防諜体制が杜撰な日本は格好の標的であるからだ。中国の対外スパイ活動について、最も詳しく語ることができるのが、自ら元工作員であることを告白し、オーストラリアで“亡命”した陳用林氏である。昨年9月に陳氏との接触に成功し、その後もコンタクトを持ち続けている国際ジャーナリスト・大野和基氏が、陳氏の証言をもとに、中国の対外工作活動の実態をレポートする(文中のカギ括弧はすべて陳氏の発言)。



在シドニー中国総領事館の一等書記官だった陳用林氏は、昨年5月末に総領事館を脱出し、妻子とともにオーストラリアに政治亡命を求めた。結局、政治亡命は認められず、7月に保護ビザを与えられることになるが、彼の事実上の“亡命”は、世界中の情報関係者から大変な注目を集めた。陳氏は、“亡命”直後の6月4日、シドニーで開かれた天安門事件16周年記念集会で、自身が中国政府の工作員であったことを明かしたうえで、中国の対外諜報の実情を暴露・告発した。

「中国政府はオーストラリア国内に1000人以上ものスパイを潜伏させ、反体制派の中国人やその家族を拉致し、秘密裏に本国に強制送還している」

陳氏は総領事館から逃亡後、妻、そして小学生の娘とともに、シドニー市内に隠れて生活をしている。陳氏の証言が、日本にとっても重要であるのは言うまでもない。自ら、中国政府のためにスパイ活動をしてきた人物で、その手口を誰よりも熟知しているからだ。


「反政府分子摘発では拉致、殺害も辞さない」

やや長くなるが、陳氏の経歴と、オーストラリアで従事していた諜報活動が具体的にどのようなものであったのかを説明しておく必要があるだろう。

上海近郊に生まれた陳氏は、大学で国際政治を専攻したために、就職先は外交部(外務省)しかなかったという。

「大学では西洋の政治思想も勉強していたので、中国共産党の本質を客観的に見ることもできたが、完全には共産党の思想は抜けなかった」

大学卒業後、北京郊外の印刷工場に送られて、毛沢東思想の洗脳を受ける。さらに91年8月に正式に外交部に採用されてからも、実際の仕事を開始する92年6月までの間、徹底した再教育を受け、共産党思想を叩き込まれたという。

94年8月までは北京で勤務、その後98年8月までフィジーの中国大使館に勤務。その後一旦北京に戻り、シドニーに赴任したのは2001年4月だった。シドニーに赴任してからの陳氏の仕事は、オーストラリア国内にいる反政府分子を探し出し、中国政府に報告すること。特に気功集団『法輪功』の信者を監視することが最重要任務だった。

「例えば、シドニーの公会堂で彼らの集会があるときは、市議会に圧カをかけて中止させるとか、信者がパスポート更新のために領事館にやってきたときにパスポートを没収するといった方法だ。ただし、非協力的な信者は拉致して、『610オフィス』に引き渡していた」






英語を駆使し、世界のVIPや渦中の人物の懐に飛び込み、ナマの情報を得る極秘テクニックを大公開!
スパイ並の情報収集の技法、アポの取り方、キーワードを引き出す話術、そして最も大事な相手との信頼感の構築法などを伝授。常にライバル社との情報戦を繰り広げるビジネスマンから、将来世界を舞台に活躍したい学生まで、必読・必修のコンテンツが満載。教材は最新の取材映像・音声を利用しますので、リアルな英語力も身につきます!
料金